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八ッ場ダムの建設中止を

 1947年のカスリーン台風によって利根川が氾濫し約1100人の死者という大きな被害が発生したため、1952年上流の群馬県長野原町で八ッ場ダムが計画され、来年度からは本体工事も始まる予定ですが、問題点も多く中止すべきであると考えます。

  八ッ場ダム関連事業の国民の総負担額は、起債の利息を含めると何と8,800億円、1兆円を突破するのは時間の問題とみられている。そのうち千葉県民の総負担額は約760億円で、県民税と水道料金として県民に重くのしかかります。一人当たりの負担額は1.3万円になり、4人家族では約5万円にもなります。この事は県民の皆様にほとんど知らされていないのが実情です。

  千葉県では、一人当たりの1日平均水使用量は、節水洗濯機や皿洗い機などの普及により最近10年間減少し続けています。県の人口はあと少し増えるだけで、2015年ころにはピークを迎え、その後は減っていきます。また、2度のオイルショックの後、多くの工場が水の浪費をやめました。水需要が今後増えることはありません。千葉県水道50万トン、千葉県工業用水道25万トンと合わせて75万トンの余裕水源があり、水余り状況です。

  治水対策は、最小の費用で最大の効果がある方法を選択しなければなりません。洪水対策の基本は、山に木を植えて緑のダムを造ること、そして、堤防の嵩上げや河床の掘削、堤防の補強など河道の整備をすることです。ダム建設に巨額の費用を投じているために、生活に根ざした河川改修がなおざりにされているといわれます。八ッ場ダムが利根川の洪水対策にさほど役立たないことは国の計算でも明らかになっています。地球温暖化による異常気象に対応するためにも治水効果が確実な河道整備に力を入れる必要があるといわれます。

  八ッ場ダムの予定地は地質が極めて脆弱です。そんなところに水を貯めると、ダム湖内に地滑りが発生するだけでなく、水没しない周辺も支えを失い崩落する危険性が極めて高いと指摘をされています。私も、昨年の6月に現地を視察して参りましたが、温泉街の移転先とさえる土地は、盛り土された箇所は地盤が非常に脆弱で地震が起きたら今にも崩れ落ちそうな状況でした。あれでは、住民の方々もとても安心して移転できないと思いました。

  ダム予定地の上流には多くの観光地、広大な農地や牧草地などがあって、たくさんの栄養物が流れ込んでいますので、貯水を開始すれば植物プランクトンの異常繁殖による水質悪化が必ず進行します。また、八ッ場ダムを造る吾妻川上流には草津白根山があります。硫黄成分の流れ込む吾妻川は、酸性度が高く中和するために大量の石灰を投入しなくてはなりません。その費用と中和生成物の除去に余分な費用がかかることになります。

  関東の耶馬渓といわれる吾妻渓谷の大半と、800年の歴史を誇る情緒豊かな川原湯温泉街が湖底に沈んでしまいます。そして、イヌワシ等の絶滅危惧種の生息にも致命的な影響を与えつつあります。

  最も安全性が高くて美味しい水道水は、地下水を水源とするものです。八ッ場ダムができると、千葉県内の多くの自治体では、最高級の水道水源である地下水が河川水に切り替えられることになっています。豊かな地下水を抱える県内の佐倉市、習志野市、船橋市、四街道市では、大事な自己水源である地下水を切り捨てて八ッ場ダムの水を押し付けられるのは納得がいかないと、2003年、各市議会で「八ッ場ダム事業の見直しを求める意見書」を採択しました。

  千葉県には他の都県と異なり、ダムによる土砂のせき止め等により九十九里海岸などの砂浜がやせ細ってきています。そのため県では砂浜を維持するために多大な予算を使わなければならない状況です。

  このように、治水・利水上の必要性が失われ、国民に巨額の負担を強い、様々な災いをもたらす八ッ場ダムの建設は、中止すべきです。これ以上、無駄な公共事業に巨額の税金を投入し、貴重な自然を破壊しなければならない理由はありません。千葉県は速やかに八ッ場ダム事業からの撤退を表明し、本体工事は何としても阻止すべきだと考えます。


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