議会活動・活動報告バックナンバー

[2011年9月号]

八ッ場ダムは本当に必要か

 3月11日の東日本大震災による福島第一原発事故で、八ッ場ダムに水力発電を期待する声が聞かれるようになりました。しかし、八ッ場ダムができると、実際には水力発電量が増えるどころか逆に大幅に減ってしまうことになります。吾妻川では、流れ込み式の水力発電所で古くから発電が行われています。八ッ場ダムができると、ダムに水を貯めるために、水力発電所に送られている水の大半を吾妻川に戻さなければならず、その発電量が大幅に減少するといわれます。

 1955年〜1984年の実績流量を使って試算すると、既設発電所の発電減少量は年平均22,400万キロワット時になります。一方、八ッ場ダムの群馬県営発電所の計画発電量は、年平均4,100万キロワット時です。

 そのために、国交省は東京電力に数百億円と言われる減電補償金を支払うことが必要です。もともと、八ッ場ダムの主目的は、発電ではなく治水と利水でした。ダム直下の吾妻渓谷に群馬県営発電所が作られる予定ですが、この新たな発電所によって生み出される発電量は、失われる発電量の5分の1にすぎません。電力不足の今、巨額の補償金を払って、電力が減ること自体、おかしなことと言わなければなりません。

 そもそも八ッ場ダム建設には、数多くの問題があります。

 昨年の衆院予算委員会で、自民党の河野太郎衆議院議員は、当時の馬淵国土交通大臣から飽和雨量が操作されていることを導き出しました。国交省の計算は、初めにダムありきでおかしいといわなければなりません。

 首都圏の水道用水は、1990年代後半から減少の一途をたどっています。これからもトイレや洗濯機などの節水型機器の普及と人口の減少で水道用水はますます減って、水余りが一層顕著になっています。

 八ッ場ダムは治水効果がわずかなので、利根川の治水対策として意味を持ちません。治水効果が確実な堤防強化などの河道対策に予算を充てる必要があります。

 八ッ場ダム湖の予定地周辺には、地すべり危険区域が22か所もあり、そのうち対策が実施されているのは僅か3か所にすぎません。それも簡易な対策でしかありません。災害誘発の危険性が大きいと言わなければなりません。

 長年ダム計画によって犠牲を強いられてきたダム予定地で生活する方々の、真の生活再建と地域の再生が今求められています。ダムができると、美しい吾妻渓谷が失われてしまいます。

 1952年に計画された八ッ場ダムに投入される公金は全国一、起債の利息を含むとなんと9,000億円にもなります。そのうち国税として約4,600億円が投入され、残りを東京都や千葉県、埼玉県、茨城県、群馬県、栃木県が負担し、千葉県民の負担金は、約760億円にものぼります。

 八ッ場ダムは、道路や鉄道、橋梁など周辺関連工事が、8割近く終了しています。道路や、橋梁などは、繋がらなくては意味がなく、これまでかかった費用がほとんど無駄になってしまいます。したがって、周辺関連工事は、続行することは止むを得ないと考えます。しかし、ダム本体の工事は未だ始まっていません。そこで、吾妻渓谷と地域の方々の生活を守るために、本体工事は中止すべきであると考えます。民主党政権下で、今秋までに結論が出される予定とのことですが、マニュフェストどおりに建設を中止することを期待したいと思います。

・追記
 上に述べましたように、八ッ場ダムには、様々な問題があることも事実ですが、知事選で建設中止を訴えてからこの2年半に、さらに350億円もの税金が投入され、湖上橋も完成する等しています。9月定例県議会では、ダム建設促進、反対の両意見書が提出されたため、選択を余儀なくされ苦渋の選択でしたが、議会最終日10月18日の時点に即して考えれば、ここまで既成事実を積み上げられたのでは建設続行もやむを得ないものとして、促進の意見書に賛成いたしました。